(2020年5月のnoteから転記)
今月に入って、公私共にオンラインだけのやりとりがほとんどになった。何度かウェブ飲み会をやったけれど、あまり手触りがないので、言葉の機微をよみとるのに普段より神経を使う。それでもって、「お互いがお互いに集中している」という状態も、実際に会っているときではなかなか起こり得ないことだから、なんとなく緊張する。
それから、リモートワークが始まった最初の月より、集中が途切れてしまうことが増えた。ぼんやり目をやるたび、窓の外はどんどん春になっていく。人と人の間に漂う、新しい年次が始まったとき特有のざわめき、あれを失ったまま迎える春は初めてだ。
4月に読んだ本(計8冊)
・俺の歯の話/バレリア・ルイセリ
・兄の終い/村井理子
・ヤクザときどきピアノ/鈴木智彦
・アノスミア わたしが嗅覚を失ってからとり戻すまでの物語/モリー・バーンバウム
・コロナの時代の僕ら/パオロ・ジョルダーノ
・シングルファーザーの年下彼氏の子ども2人と格闘しまくって考えた「家族とは何なのか問題」のこと/花田菜々子
・人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした/大木亜希子
・出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと/花田菜々子
俺の歯の話 松本健二先生訳だったので手に取った。シュールでめちゃくちゃ骨太なしびれる文章。競売人である主人公の話芸にどんどん引き込まれ、このまま煙に巻かれていくのかと思いきや、主人公ごと別の事件に巻き込まれる。俺の歯がまじで俺の歯なんだよな。 / 兄の終い すごくリズミカルで、ゆっくり進めたら胸の詰まるような題材を、まるで軽快なロードムービーのように読ませてしまう技がすごい。「一刻も早く、兄を持ち運べるサイズにしてしまおう」。 / ヤクザときどきピアノ ピアノでたった一曲好きな曲を弾けるようになれたらという一心でピアノを習いにいく、その記録。「ヤクザの抗争があるとレッスンに行けなくてつらい」。わたしは小学校の音楽教育に自尊心をめちゃめちゃにやられていたタイプの人間なので、音楽ができたらなあというその憧れに頷きながら読んでしまった。 / アノスミア〜 最近の流行り病では嗅覚と味覚が失われる可能性があるらしくて、タイムリーだなあと思って読んだ。読みやすい語り口ながら、がっつりアノスミアの症状や回復、においと人生について書かれていておもしろい。研究室を訪ね、クリニックに通う合間に、パンを焼き、恋人の匂いの不在に心乱される、年近い女性の記録。 / コロナの時代の僕ら 話題の本なので。スピード感がすごいな。数学に長けた著者によって、繰り返し自宅にいることが自分と他者を、ひいては世界を守るための数学的に正しい唯一の術だと説いてくる。この災厄のなかで考えたことを、忘れるべきではないと訴える。 / シングルファーザーの〜 本を勧めた話で有名な著者の第2作。とはいえその本は読んでいないのですが… どうすれば真摯であれるのかを悩み続ける態度なので、信頼できる人だなあと思わされる。最初の本も読んでみようと思う。書店づくりの話などにも言及していておもしろい。 / 人生に詰んだ〜 先日、はらだ有彩さんとの対談を読んだので。対談でも書かれているけど、アイドルを引退した自分というものを成仏させて、そして楽しく暮らすのだ、それの何が悪い、とがんばっている姿がよくて、それはそのまま、わたしがつい自分にかけてしまう呪いを解こうという気持ちにもさせてくれる。ラフだけどちゃんと読みやすい文章なので、友人の話を聞いてるような気持ちで読んだ。 / 出会い系サイトで〜 シングル〜のが良かったので前作も。最後に寄せられている岸政彦先生の文章がおどけていていいな。
4月に読んだ漫画(計16タイトル)
・長閑の庭/アキヤマ香
・宙に参る/肋骨凹介
・月刊少女野崎くん/椿いづみ
・ランド/山下和美
・がっこうぐらし!/千葉サドル
・千年万年りんごの子/田中相
・ゆりあ先生の赤い糸/入江喜和
・彼女は宇宙一/谷口菜津子
・彼女と彼氏の明るい未来/谷口菜津子
・ルポルタージュ/売野機子
・異世界失格/野田宏、若松卓宏
・パリピ孔明/小川亮、四葉夕卜
・初めて恋をした日に読む話/持田あき
・いいね!光源氏くん/えすとえむ
・岡崎に捧ぐ/山本さほ
・可愛そうにね、元気くん/古宮海
宙に参る 宇宙を股にかけた壮大な里帰り漫画とでも言うのか、これはすごいな〜〜楽しい漫画だな〜〜〜早く続きが読みたい。まだ1巻しかでてないのがはがゆい。はやくこの世界にどっぷりいきたい。 / ランド 50歳を迎えると「天命」といって寿がれ、安楽死を迎えるという不思議な村、そこで生まれて引き離された双子の物語。「タタール人の砂漠」読んだ時と同じくらい人間というものの書かれ方に胸がつまる。 / がっこうぐらし! 絵柄が不得意だな〜と思うものも積極的に読むことにしているのですが、これはまさにそれで、とても面白く読んだのでこの方針は間違っていない!と思った。なんかつい「頼む!もうすこし肌を覆った格好をしてくれ!(安全のために!)」とか思ってしまうんだよな。 / 千年万年りんごの子 以前友人宅でさわりだけ読んだのを思い出して。もとからだめだったけど結婚してから夫婦ものでほんと引くほど泣いてしまう / ゆりあ先生の赤い糸 これも夫婦ものか…?話題だったので読んだけどもうゆりあ先生が心配で心配ではらはらする / ルポルタージュ えーこれめっちゃ好き…どの登場人物も愛おしくなるタイプの漫画あるけどそれ… / パリピ孔明 友人の勧めで。諸葛亮が軍師について歌手志望の女の子のサポートをしていく話なんですがめっちゃ面白い、もうぜったいなんとかしてくれるじゃんこんなの…という期待で読んでしまう イップマンと同じ楽しみ方かもしれない… / 初めて恋をした日に読む話 作者さんが中高生の頃読んでた槙ようこ先生の妹さんだと知ってハァー!となった このテンションの少女漫画知ってる!と思ったらそういうことか… 東大受験と絡めた漫画なの知らなかった 塾の廊下側の机で窓越しに飴くれるのめっちゃウケたんですけどウケるとこなのかがわからなかった / いいね!光源氏くん 転生もの(?)こっち側に転生してくる系もあるんだなーと孔明のときも思ったけど光源氏がイケメンなのでもうなんでもいいです。光源氏がイケメンの漫画。 / 岡崎に捧ぐ これはシングルファーザーの本読んだときに言及されてたので読んだ、小学生からの友人との話なんですが、やや世代がかぶっていて懐かしさがすごい わたしはこんなふうに人と向き合うのが本当に苦手だったというか、べったりされると怖くて逃げちゃう人生だったので、丁寧に育まれた友情がほんとうに宝石のほうに見える / 可愛そうにね、元気くん 友人の勧めで。2話目くらいで叫んだ これこのヒリヒリズキズキ感なかなかないなーーーー「この愛を終わらせてくれないか」とか「恋と嘘」とかも痛いけどこれはもう痛い(物理)が含まれてるからな…
4月に観た映画(計6件)
・イップ・マン 序章/ウィルソン・イップ
・イップ・マン 葉問/ウィルソン・イップ
・イップ・マン 継承/ウィルソン・イップ
・アリー スター誕生/ブラッドリー・クーパー
・タグ/ジェフ・トムシック
・ビート -心を解き放て-/クリス・ロビンソン
イップマンシリーズ 友人たちのLINEでお勧めされていたので、仕事しながら流し見した。これは水戸黄門…どんな敵もイップマンが丁寧に確実に倒していく… / アリー〜 調べて初めて知ったのだけど、これはリメイクものなのね。レディーガガの存在の華やかさがすごい。この、いままで隠れていた人が本領を発揮する時のカタルシスみたいなやつ、どんな作品でみてもつい笑顔になってしまう…素直なので… / タグ 幼なじみの友人たちが、小さい頃に始めた鬼ごっこを大人になった今も本気でやる というただそれだけの話なのだけど、一度も捕まったことのない人の役をジェレミー・レナーがやっていて、彼の動きだけがやたらとアクション慣れしている人なのが最高 / ビート 慕っていた姉が自分の目の前で撃たれて死んでしまってから外に出られなくなってしまった少年と、彼の音楽の才能に目をつけた元音楽プロデューサーのバディ映画 あのー三宅唱の映画「THE COCKPIT」でも思ったけど、打ち込みしてるシーン、あれ好きなんだよな〜〜音楽の素養がないので魔法の箱にみえる…
4月に観たドラマ、展示(なし)
4月に遊んだゲーム(計3タイトル)
・The Mosaic/Raw Fury
・Where Cards Fall/Snowman
・Ministry of Broadcast/PLAYISM
The Mosaic 毎日毎日会社に向かう社会の歯車サラリーマンを操って、日常から逸脱させていく(?)ゲーム ともかくビジュアルがしゃれてる。そして時々操作しているのに主人公を見失う時があるのでゾッとする。主人公=大多数のなかから選ばれたひとり という思い込みを引き剥がされる一瞬がある。 / Where Cards Fall 空間にカードを展開した箱を作って導線を作るパズルゲーム。主人公の過去を辿っていく描写のまなざしが優しい。 / Ministry of Broadcast 夫がプレイしていたので終わった後に借りた。ジョージ・オーウェルの「1984」がモチーフとのことで、全体主義国家が舞台。国営テレビのリアリティショーで勝ち抜けば壁の向こうの国の家族に会える…という目的のもと主人公を動かすんだけど、とにかく人を犠牲にしながらすすむ胸糞激悪ゲームで、「ごめん!ごめん!」と叫びながらプレイした。ゲームオーバーになったときの文言に震える。ディストピアを満喫しました